DX・IT投資

DX人材は採用か育成か|社内に必要な役割を定義してから決める3つの判断軸

最終更新:2026-08-14

「DX人材が欲しい」とは思うものの、外から採るべきか、社内で育てるべきかで手が止まる。DX人材は不足していて採用も簡単ではない。ここで多いのが、採用か育成かをいきなり二択で考えてしまうことです。ですが本当の入口は、そもそも社内にどんな役割が足りていないのかを決めることにあります。役割が決まらないまま採用に動けば人物像がぶれ、育成に動けば何を教えるかが定まりません。ここでは、必要な役割をどう定義し、採用か育成かをどの軸で分け、育成を選んだときにどう早く戦力にするのかを、順番に見ていきます。

DX人材は、採用と育成のどちらで確保すべきか

DX人材の確保は、採用か育成かの二択ではありません。先に「社内にどんな役割が足りていないか」を1つに絞り、そのうえで役割ごとに3つの軸で分けます。いつまでに必要か(時間)、市場で採れるか(希少性)、自社の競争力の芯か(競争力)です。急ぎで・市場にいて・競争力の芯ではない役割なら採用に、時間をかけられて・市場で採りにくく・競争力の芯になる役割なら育成に傾きます。そして多くの場合、答えはどちらか一方ではありません。核になる人材を1人採用し、その人を軸に社内で育てる組み合わせが現実的です。

採用か育成かをいきなり二択にすると、議論が「採れるか採れないか」だけに寄り、何のための人材かが抜け落ちます。DX人材は市場全体で不足していて、即戦力を採用だけで揃えるのは中堅・中小企業には難しいのが実情です。だからこそ、採用と育成を組み合わせる前提で、まず役割の定義から入る必要があります。

なお、そもそも自社でやるか外部に任せるか、という体制そのものの選択は、本記事とは別の判断です。副業・兼業といった中間の選択肢を含め、内製か外注かは体制判断の記事にまとめています。本記事は「自社で持つと決めた人材を、採用で得るか育成で得るか」に絞ります。

「DX人材が欲しい」の前に、どんな役割が必要かをどう決めるか

「DX人材」とひとくくりにすると、採用も育成も的を外します。必要なのは、事業をどう変えるかを描く役割なのか、データを扱う役割なのか、仕組みをつくる役割なのか、現場と橋渡しする役割なのか、で人物像がまるで違うからです。経済産業省とIPAがまとめている「デジタルスキル標準」は、DXを進める人材の役割を類型で示していて、自社に当てはめる公的な目安になります。まず、この中で自社に足りていない役割を1つに絞ります。役割が決まってはじめて、それを採用で得るか育成で得るかを判断できます。

役割を絞らずに「DXがわかる人」を探すと、採用では応募者の何を見ればよいかが定まらず、育成では何をどこまで教えればよいかが決まりません。逆に、足りない役割を1つに絞ると、求める要件も、育てる道筋も具体的になります。複数の役割が足りていると感じるときも、まず最初の1つを決め、そこから順に埋めていくほうが動き出せます。

採用と育成を分ける3つの軸は何か

足りない役割を1つに絞ったら、採用か育成かを3つの軸で決めます。第1に時間、いつまでにその役割が必要か。すぐに必要なら採用、時間をかけられるなら育成が向きます。第2に希少性、その役割の人材が市場で採れるか。DX人材は不足していて、市場でほとんど採れない役割は、育成で用意するしかありません。第3に競争力、その役割が自社の強みの芯にあるか。芯にある役割は、中で育てて自社に残すほうが効きます。周辺の役割なら、採用や外部で早く埋めるのが合理的です。この3つを重ねて、役割ごとに採用寄りか育成寄りかを決めます。

  1. 時間(いつまでに必要か):立ち上げに間に合わせたい役割は採用、腰を据えて任せたい役割は育成。急ぎの穴を採用でふさぎ、その裏で育成を走らせる二段構えも取れます
  2. 希少性(市場で採れるか):DX人材は市場全体で不足しています。募集をかけても採れない役割は、採用の可否を待つより育成に切り替えたほうが早いことがあります
  3. 競争力(自社の強みの芯か):芯になる役割は、外から採ってもその人が抜ければ振り出しに戻ります。中で育てて複数人に広げると、強みが会社に残ります。周辺の役割は採用や外部で足ります

DX人材が市場でどれだけ不足しているか、募集をかけても採れない構造については、体制判断の記事で公的データとともに扱っています。また、採用したものの定着しない、応募が来ないといった採用側の詰まりは、採用そのものを構造で捉える記事にまとめています。本記事は、その手前の「採るか育てるか」の分け方に絞ります。

育成を選んだとき、どうすれば早く戦力になるか

育成は時間がかかるという通念がありますが、縮められる余地があります。鍵は、ベテランの頭の中にある手順(暗黙知)を、誰でも引き出せる形(形式知)に変えることです。熟練者の仕事を工程ごとに分解し、動画や手順書にして、いつでも参照できるデータベースにしておくと、教える側の時間に縛られず、学ぶ側が必要なときに必要な工程だけを見返せます。人に付いて覚えるだけの育成より、立ち上がりが早くなります。育成を選ぶ判断と、育成を速くする工夫は、分けて考えると整理できます。

DX人材の確保に動く前に、DXが最優先の領域かを確かめる

DX人材の採用や育成には、費用も時間もかかります。動き出す前に、そもそもDXが自社にとって今いちばん手をつけるべき領域かを確かめておく必要があります。利益が伸びない原因が価格の付け方や既存事業の収益構造にある場合、DX人材をどれだけ丁寧に揃えても、損益はすぐには動きません。無料の経営ROI診断(約5分)は、成長戦略・意思決定・組織実行・人材後継・DX業務・顧客市場の6領域を横断してスコア化するため、人材の確保に投資する前に、その順位が自社にとって妥当かを第三者のフレームで確かめられます。

人材の確保は着手すると動いている手ごたえがあり、そのぶん順位の高くない領域に人と費用が向いたまま時間が過ぎることもあります。採用や育成の計画に入る前に、投資の順位そのものを照らし直す材料として使えます。

よくある質問

Q. DX人材は、採用と育成のどちらがよいですか?
A. 二択で決めるものではありません。先に社内で足りていない役割を1つに絞り、そのうえで3つの軸で分けます。いつまでに必要か(時間)、市場で採れるか(希少性)、自社の競争力の芯か(競争力)です。急ぎで・市場にいて・周辺の役割なら採用、時間をかけられて・市場で採りにくく・競争力の芯になる役割なら育成に傾きます。多くの場合は、核になる人材を1人採用し、その人を軸に社内で育てる組み合わせが現実的です。DX人材は市場全体で不足しているため、採用だけで揃える前提を置かないほうが計画は進みます。
Q. DX人材が不足していて採用できないときは、どうすればよいですか?
A. 募集をかけても採れない役割は、採用の可否を待ち続けるより、育成に切り替えたほうが早いことがあります。とくにその役割が自社の競争力の芯にある場合は、外から採ってもその人が抜ければ振り出しに戻るため、中で育てて複数人に広げるほうが会社に強みが残ります。急ぎで穴を埋めたいときは、採用や外部で当座をしのぎつつ、その裏で育成を走らせる二段構えも取れます。自社でやるか外部に任せるか、副業・兼業を使うかという体制そのものの選択は、内製か外注かを扱う別記事に整理しています。
Q. 「DX人材」とは、具体的にどんな役割を指しますか?
A. ひとくくりにできる存在ではなく、役割で分かれます。事業をどう変えるかを描く役割、データを扱う役割、仕組みをつくる役割、現場と橋渡しする役割などです。経済産業省とIPAがまとめている「デジタルスキル標準」は、DXを進める人材の役割を類型で示していて、自社に当てはめる公的な目安になります。大切なのは、この中で自社に足りていない役割を1つに絞ることです。役割が決まってはじめて、それを採用で得るか育成で得るかを判断できます。「DXがわかる人」という粒度のままでは、採用も育成も的を外します。
Q. DX人材の育成には、どのくらい時間がかかりますか?
A. 役割や本人の経験によって幅がありますが、通念より縮められる余地があります。鍵は、ベテランの頭の中にある手順(暗黙知)を、誰でも引き出せる形(形式知)に変えることです。熟練者の仕事を工程ごとに分解し、動画や手順書にしていつでも参照できるデータベースにしておくと、教える側の時間に縛られず、学ぶ側が必要なときに必要な工程だけを見返せます。人に付いて覚えるだけの育成より立ち上がりが早くなります。ただし短縮の度合いは業務や体制によって異なり、同じ結果を保証するものではありません。
Q. AI人材の育成は、DX人材の育成と何が違いますか?
A. 大きくは同じ枠組みで考えられます。まず役割を絞り、採用か育成かを時間・希少性・競争力の3軸で分ける、という流れは共通です。違いは役割の中身で、AIを使う人材はデータの扱いや生成AIの活用といった、より新しく変化の速い領域に寄ります。市場での希少性が高く採りにくいぶん、育成に傾く傾向があります。学ぶ内容の陳腐化も速いため、一度きりの研修より、現場で使いながら更新し続ける形が向きます。
Q. リスキリングや研修の助成金は、DX人材の育成に使えますか?
A. 国や自治体には、従業員の学び直しや研修にかかる費用の一部を支援する制度があり、DX人材の育成に活用できる場合があります。ただし対象や要件、募集の時期は制度によって異なり、変わることもあるため、必ず最新の公的情報で確認してください。本記事は助成金の中身そのものではなく、採用か育成かをどう決めるかに絞っています。デジタル化やAI導入に関わる補助金・助成金の全体像と、自己負担がどのくらいで回収できるかは、補助金を扱う記事にまとめています。制度の適用可否は個々の状況によって異なります。

参照(背景)

本記事はDX人材を実際に採り・育ててきた実務経験と、公的な役割標準に基づく整理です。具体的な数値の再掲は避け、人材不足の統計や採用の構造はクラスタ内の関連記事へリンクしています。以下は背景理解のための参照先であり、本記事の主張の算出根拠ではありません。

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